高校生の進路選択は、人生における重要な分岐点です。
しかし、「やりたいことがない」「自分に何が向いているのかわからない」といった悩みを抱える高校生も少なくありません。このような状況は、進路指導を行う教育者や保護者にとっても大きな課題となります。
この記事では、「高校生の進路選択」に課題を感じる教育者や学校関係者の方々に向けて、進路指導の具体的な方法や、悩みへの対応策を詳しくご紹介します。生徒の未来を切り拓くためのヒントとしても、ぜひお役立てください。

監修者:岩城成弘(いわしろ あきひろ)
スターバックスコーヒーやウォルト・ディズニー・ジャパンでの豊富な実務経験を活かし、日本全国の企業や教育機関などで、ホスピタリティ研修を開催している。特に、ディズニー流の「おもてなし」を基軸にした、企業のブランド価値を高める研修が人気。実践的かつ成果につながる指導が、多くの企業から高い評価を受けている。
高校生の進路選択で多い悩み

高校生が進路を決める際には、さまざまな悩みや課題が生じます。その原因は、高校生自身の問題だけでなく、周囲の環境やサポート体制が影響していることも少なくありません。
ここでは、高校生が進路を決められない主な理由と、進路指導を行う保護者や教育者が直面する課題について解説します。
高校生が進路を決められない主な理由
高校生が進路を選べない理由には「やりたいことがない」「自分に向いている道がわからない」といった悩みがあります。悩みの原因は、自分の興味や得意なことに気づいておらず、進路選択の基準が明確でない場合が多いです。
また、周囲の期待やプレッシャー、学力や経済状況、地域特有の制約なども影響します。これらの課題を解決するには、生徒一人ひとりに合った支援が必要です。
保護者や教育者が感じる進路指導の課題
保護者や教育者の悩みとして、「子どもが進路選びに積極的でない」「適切な言葉かけがわからない」といった声がよく聞かれます。進路選択の重要性を十分に理解できていない生徒に対してサポートするのは難しいでしょう。
さらに、保護者や教育者自身が情報不足や指導スキルへの不安を抱えている場合もあります。
大切なことは、まず生徒が抱えている不安や疑問を理解することです。そのうえで、適切な情報を共有し、安心できる環境を整えることが求められるでしょう。
「やりたいことがない」高校生へのサポート方法

高校生の多くは、「やりたいことがない」という理由から進路を決められなくなってしまいます。ここでは、その理由と解決策を見ていきましょう。
「やりたいことがない」と感じる理由を理解する
高校生が「やりたいことがない」と感じる背景には、いくつかの要因があります。
まず、自分の興味や特技に気づいていないことが挙げられるでしょう。また、将来の選択肢や情報が不足しており、自分の可能性を広げられないケースも見られます。さらに、他人と自分を比較しすぎた結果、自信を失い、進路選択に対して消極的になることもあります。
こうした原因を理解し、生徒一人ひとりが感じている不安や葛藤などを把握したうえで、適切なサポートを行うことが重要です。
やりたいことを見つけるための方法を伝える
生徒がやりたいことを見つけるには、「嫌いなこと」から考えるアプローチも効果的です。たとえば、逆に「やりたくないこと」を明確にすると、逆に自分の希望が見えてくる場合があります。また、趣味や好きな活動を掘り下げることで、進路のヒントが得られることもあります。
さらに、社会の問題や未来に目を向けるよう促すことで、自分自身の価値観や興味の方向性を具体化するヒントになるでしょう。
可能性を広げる情報や体験を提供する
生徒の可能性を広げるには、さまざまな情報や体験を提供することが効果的です。大学や専門学校のオープンキャンパス、企業のインターンシップ、キャリアカウンセラーとの相談などを通じて、多様な選択肢に触れる機会を提案しましょう。
また、文化祭や部活動での挑戦を通じて、自分の強みや学びを発見できる場を作ることも有効です。これらの体験を振り返ることで、生徒の自信を育み、次の挑戦につなげる力を養えるでしょう。
さらに、結果だけでなく努力の過程を評価し、安心して行動できる環境を整えることも大切です。生徒一人ひとりの気持ちに寄り添いながら進路を考えるプロセスを通して、お互いに信頼関係を築くことも意識しておきましょう。
高校生が進路選択で検討する選択肢

進路の選択肢は多岐に渡ります。大学へ進学する生徒もいれば、家業を継ぐ生徒もいるかもしれません。しかし、生徒が選ぶ選択肢として特に多いのは、大学や専門学校への進学、高卒就職ではないでしょうか。ここでは、大学進学、専門学校、高卒就職についてそれぞれの特徴を簡潔に紹介します。
大学へ進学
大学は学問を深く学ぶ場所で、特定の分野について研究したい生徒や幅広い教養を身につけたい生徒に向いています。また、近年は、複雑な問題を解決するために専門分野を超えた知見を持つことが重要視されています。そうした学際的な知識を学びたい場合にも適した選択肢です。
専門学校へ進学
専門学校は、実践的なスキルを身につけ、特定の職業を目指す生徒に向いています。就職に直結しやすい点が魅力で、学校を選ぶ際には、「進学時には就職の実績があるか」「専門的な資格を取得できるのか」といった点を確認することが大切です。
高卒就職
高卒就職は、早期に働き始めたい生徒に適しています。特に、人材が不足しがちな昨今では、高卒で就職することも現実的な選択肢といえるでしょう。しかし、大学や専門学校を卒業していなければ応募できない会社もまだまだ多いのが実情です。仮に高卒で就職できたとしても、職種やキャリアの幅が限られる可能性もあるため、将来像を考えて検討することも重要です。
高校生の進路選択をサポートする3つの視点

高校生が納得のいく進路を選ぶためには、いくつかの視点から多角的に検討することが大切です。ここでは、生徒が進路を考える際に役立つ3つの視点について解説します。
1. 自分の「好き」や「得意」から考える
進路選択では、自分の「好き」や「得意」を見つめ直すことで、進路を選びやすくなります。そのため、幼少期から夢中になったことや得意科目、小さな成功体験を振り返ると良いでしょう。
また、家族や友人に意見を聞くことで、自分では気づきにくい強みを発見できる場合もあります。さらに、進路診断ツールやキャリアワークショップを活用して、自分の特性を客観的に把握し、進路を考える参考にしましょう。
2. 将来どんなライフスタイルを送りたいかを考える
進路選択をする際には、理想のライフスタイルから考えてもらうことも有効です。「地元で暮らしたい」「都市部で働きたい」といった希望に応じて進路を選ぶ方法もあります。
具体的なイメージを持つためには、家族や友人と話し合ったり、理想とする人の生き方を研究したりするのが効果的です。
3. 学びたいこと・目指したい職業から逆算する
目指したい職業に必要な資格やスキルを調べ、それを学べる学校を選ぶ方法も有効です。オープンキャンパスや職業体験を通じて、具体的な進路イメージを持つのがポイントです。目標に向けて効率的な道筋を描くことで、進路選択の方向性が明確になります。
状況に応じた保護者や教育者のサポート方法
進路相談では、生徒の反応に応じた柔軟な対応が重要です。以下に、よくある生徒の反応別の対応方法を挙げます。
・話を聞いてくれない場合
焦らず雑談の中で興味を探りましょう。「最近楽しかったことは?」など、進路に直接関係のない話題から心を開くきっかけを作ります。
・投げやりな態度をとる場合
「どうでもいい」という言葉の裏にある本音を探ります。「具体的に困っていることはある?」や「一緒に調べてみようか」と促して関心を引き出します。
・反発してくる場合
一旦距離を置き、感情が落ち着いてから再度話を切り出します。「どうしたいか決めるのはあなた自身だよ」と主体性を尊重する姿勢が大切です。
生徒の反応によって、一人ひとりに寄り添った対応を心がけましょう。
高校生の進路選択支援に活用できるサービス

高校生の進路選択のヒントになる診断ツールなどを活用すると、現時点でどこに躓きを感じているのか、どんな悩みを抱えているのかが明確になります。進路選択に便利なツールの概要や特徴については、以下のとおりです。
方法 | 対象 | 概要 | 特徴 |
オンライン診断ツール | 学生 | MBTI、進路適正 自己診断テスト、グッドポイント診断などを使って自己分析 | 無料で利用可能、特性や適性の確認 |
キャリアカウンセリング | 学生 | キャリアアドバイザーとの対話を通して進路を整理 | 専門家による個別指導、将来の方向性の明確化 |
進路説明会・キャリアイベント | 学生、保護者、教育者 | 自治体によるセミナーや地域のイベントに参加して、最新の進路情報を取得 | 無料で開催されていることも多い。情報収集、生徒と保護者・教育者間の情報共有 |
外部研修(進路選択講話・ワークショップ) | 特に「やりたいことがない」と悩む学生 | 専門家による講話やワークショップで、自己分析を深め進路を整理 | 集団で受講可能。専門家による講話やワークで新しい視点の提供 |
高校生の進路選択をサポートするためにできること
高校生の進路選択では、「好き」「得意」「ライフスタイル」といった視点を取り入れると考えやすくなります。教育関係者や保護者は、生徒が自ら考え、行動できるようにサポートする姿勢が大切です。また、プロのサポートや研修を活用するのも効果的でしょう。
MCSCでは「進路選択講話」や「卒業生向けホスピタリティ研修」など、生徒の可能性を広げる研修を実施しています。気になる方は、お気軽にお問い合わせください。
進路選択は生徒の将来を左右する大切なプロセスです。適切な支援を通じて、生徒の未来を一緒に応援していきましょう。