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院内コミュニケーション改善|多職種連携・報連相・申し送りの7つの方法

「申し送りで伝えたつもりだった」「医師・看護師・リハビリ・事務で認識が違った」「新人が誰に相談すればよいか分からない」。院内コミュニケーションを改善するには、単に話し方を学ぶだけでは不十分です。情報共有の型、役割分担、相談ルート、管理者の関わり方が曖昧なままだと、小さな認識差が患者対応や職員の負担につながります。

実際に医療機関の教育では、コミュニケーション、多職種連携、コーチング、報連相などが継続的な研修テーマとして扱われています。大切なのは「もっと仲良く話そう」で終わらせず、誰が・何を・いつ・どのように共有するかを仕組みにすることです。

この記事では、看護部長・看護師長・主任・教育担当者・クリニック管理者が、院内コミュニケーションを改善するための7つの実践方法を整理します。

多職種連携とは?院内コミュニケーション改善の土台

多職種連携とは、医師、看護師、薬剤師、リハビリ職、医療事務、看護補助者など、異なる専門性を持つ職種が、患者さんに必要な情報と目的を共有しながら役割を分担・補完することです。重要なのは「職種が多いこと」ではなく、誰が判断し、誰が実行し、どの情報をどのタイミングで共有するかが明確であることです。

2026年の医療現場では、院内スマートフォン、チャット、音声入力、生成AIなど情報共有を支援するツールが広がっています。一方で、ツールが増えても、相談基準や引き継ぎルールが曖昧なままでは「記録はあるが伝わっていない」状態が起こり得ます。多職種連携を強くするには、テクノロジー導入より先に、申し送り・報連相・確認の共通ルールを整える必要があります。

院内コミュニケーションが崩れる3つの原因

院内コミュニケーション改善のため医療スタッフが情報共有するミーティングのイメージ

1.情報共有が「人によって違う」

口頭、チャット、記録、申し送りなど複数の経路があるほど、情報が分散しやすくなります。「言った」「聞いていない」を減らすには、重要情報をどこへ残すかを決める必要があります。

2.報告・相談の基準が曖昧

新人や看護補助者が「これくらいで声をかけてよいのか」と迷う状態では、相談が遅れます。相談のしやすさを個人の人柄に任せず、緊急度と報告先を共通化します。

3.忙しさで確認が省略される

忙しい現場ほど、短い確認や復唱が後回しになります。しかし、確認を省くことで後からやり直しが増えれば、結果的にさらに忙しくなります。短時間でも認識をそろえる仕組みが必要です。

院内コミュニケーションを改善する7つの方法

1.申し送りの「型」をそろえる

伝える内容が人によって違う場合、情報の優先順位がぶれます。患者さんの状態、変化、注意事項、次に必要な対応を一定の順番で共有し、重要事項を先に伝える習慣をつくります。

  • 今、何が起きているか
  • 何が変化したか
  • 何に注意するか
  • 次に誰が何をするか

報連相や認識ずれの基本は、「コミュニケーションミスの原因と解決策」も参考になります。

2.「相談してよい基準」を言葉にする

看護師長とスタッフが院内で短時間の報告・相談を行うイメージ

「分からなかったら聞いて」と言うだけでは不十分です。どの状態ならすぐ相談するのか、誰が不在なら次に誰へ聞くのかまで決めます。特に新人や中途入職者には、相談先を複数用意すると抱え込みを減らせます。

報連相の会話例

新人:「Aさんの食事量がいつもより少なく、むせも増えています。今すぐ確認いただいた方がよいでしょうか」

先輩:「ありがとう。今の時点で気づいた変化をもう一度教えてください。確認後、必要なら看護師長にも共有します」

相談を受けた側が最初に否定せず、事実確認から入ることで、次の相談もしやすくなります。

3.復唱と確認を「失礼」ではなく安全行動にする

指示を受けた側が復唱する、依頼した側が理解を確認する。これだけでも認識ずれは減ります。確認は相手を疑う行為ではなく、チームで安全性を上げる行動として共有します。

申し送りの具体例

曖昧な例:「Aさん、ちょっと注意して見ておいてください」

改善例:「Aさんは午前からふらつきが増えています。歩行時は必ず付き添い、立ち上がりで強いふらつきが出たら無理に進めず、私へすぐ報告してください」

何を観察するか、どの状態で止めるか、誰へ報告するかまで含めると、受け手が判断しやすくなります。

4.職種ごとの前提の違いを理解する

医師、看護師、薬剤師、リハビリ職、医療事務などは、それぞれ見ている情報や優先順位が違います。「普通は分かるはず」と考えるのではなく、相手の専門性と役割を理解したうえで、必要な情報を言葉にします。

看護補助者を含む職種間連携では、業務範囲だけでなく、指示の出し方、報告基準、相談先まで共通化することが重要です。特に「誰に聞けばよいか分からない」状態を放置すると、判断の遅れや抱え込みにつながります。看護補助者との役割分担、指示・復唱・報告・相談を具体化する方法は、公開済みの「看護補助者との連携|指示・報告・相談で事故を防ぐ7つのポイント」で詳しく整理しています。情報共有全般の基本については、「コミュニケーションミスの原因と解決策」も参考にしてください。

5.注意・指導の言い方をそろえる

看護管理者とスタッフが業務分担と指導方法を確認するイメージ

同じミスでも指導者によって言い方が大きく違うと、職員は「何が正解か」より「誰に怒られないか」を気にするようになります。安全上必要な厳しさは保ちつつ、人格否定を避け、事実・影響・次の行動を分けて伝えます。

6.患者・家族対応の情報をチームで共有する

患者さんやご家族から強い不満があった場合、担当者一人だけが状況を知っていると、次の対応者が同じ説明を繰り返したり、逆の案内をしてしまうことがあります。対応履歴、合意した内容、次回の担当者を共有します。

患者対応の基本は「看護のホスピタリティと医療接遇」、暴言や威圧への組織対応は「クリニックのカスハラ対策」もあわせて確認できます。

7.ミスが起きた後に「誰が悪い」で終わらせない

院内研修で医療スタッフがコミュニケーション事例を振り返るイメージ

コミュニケーションエラーが起きたときは、個人の注意不足だけでなく、指示が曖昧だったか、記録場所が分かりにくかったか、相談しにくかったか、業務量が過剰だったかを確認します。再発防止は、個人への注意だけではなく仕組みの修正まで行って初めて完了します。

看護師長・主任が使える院内コミュニケーションチェックリスト

確認項目 見るポイント
申し送り 重要情報の順番と記録場所が共通化されているか
報告・相談 緊急度と相談先が明確か
指示 期限・中止基準・報告先まで伝えているか
多職種連携 職種ごとの役割と担当範囲を互いに理解しているか
新人育成 新人・中途職員が相談できる人を複数持てているか
患者対応 強い不満や重要な説明内容がチームで共有されているか
振り返り ミスを仕組みの改善につなげているか

立場別|院内コミュニケーションで起こりやすい課題

新人看護師

新人看護師は、「何をどのタイミングで相談すべきか」「忙しい先輩に声をかけてよいか」で迷いやすい傾向があります。相談の遅れを個人の性格の問題にせず、報告例や相談先を明確にし、短時間でも確認できる仕組みをつくります。

主任・リーダー

主任・リーダーは、現場の判断と管理者への報告の間に立つ役割です。自分で抱え込み過ぎると情報が滞るため、「自分で判断すること」「看護師長へ上げること」をあらかじめ整理しておきます。

看護師長

看護師長は、個々のコミュニケーション能力だけでなく、部署全体で同じ基準が使われているかを確認します。相談が特定の人へ集中していないか、注意・指導の言い方が人によって極端に違わないかも重要な確認項目です。職員が働き続けられる環境という視点では、「看護師の離職防止|看護管理者が実践する7つの改善策」も参考にしてください。

看護師長の声かけ例

  • 「今、一番伝わりにくいと感じている場面はどこですか?」
  • 「誰に相談するか迷うケースはありますか?」
  • 「この1週間で、伝え直しや確認し直しが多かった場面はありましたか?」
  • 「個人の注意ではなく、仕組みを変えた方がよいことはありますか?」

「困っていることはある?」だけでは答えにくい場合があります。具体的な場面を尋ねると、現場の詰まりを見つけやすくなります。

多職種チーム

多職種連携では、「相手も同じ情報を見ているはず」という思い込みが起こりやすくなります。職種ごとの役割や記録場所、引き継ぎ基準を可視化し、専門職同士の前提差を埋める必要があります。

院内DX・AIを導入する前にそろえたい3つのルール

厚生労働省が2026年9月29日に公表した「令和8年版 厚生労働白書」では、医療・介護・福祉の現場について、2040年を見据えながらICT・AI・ロボット等のテクノロジー活用による生産性向上と、質の高いサービス提供を両立する方向性が示されています。院内コミュニケーションでも、ツール導入そのものを目的にせず、現場の役割分担と情報共有のルールを先に整えることが重要です。

2026年は、看護記録や申し送りを音声入力・自動要約で支援する医療DXの事例も増えています。こうしたツールは記録負担や情報共有の効率化に役立つ可能性がありますが、導入するだけで院内コミュニケーションが改善するわけではありません。

  1. 何を記録するかを先に統一する:患者状態の変化、注意事項、次の対応など、申し送りで必ず残す項目を決めます。
  2. 誰が確認するかを明確にする:AIやチャットに記録した情報を、誰が最終確認し、必要な相手へ引き継ぐかを決めます。
  3. 緊急時は対面・電話へ切り替える:急変や安全に関わる内容を、非同期のチャットや記録だけで完結させない基準を設けます。

ツール導入の前に情報共有の型をそろえておくと、ICTやAIを導入した後も「記録は増えたが伝わらない」という状態を防ぎやすくなります。院内コミュニケーション改善では、ツール選定より先に運用ルールを設計することが重要です。

参考:NTTドコモビジネスソリューションズ「組合立諏訪中央病院 導入事例」、MedTech Group「申し送り・看護記録を“話すだけ”で完了。残業を減らす音声AI」(2026年6月3日公開)

30日で改善するならこの順番

  1. 1週目:現場で「伝わらなかった」「相談できなかった」事例を3件集める
  2. 2週目:申し送り・相談・患者対応のうち最も頻度が高い課題を1つ選ぶ
  3. 3週目:伝え方の型、相談先、記録ルールを小さく統一する
  4. 4週目:実際に使ってみて、分かりにくかった点を修正する

最初から大きなルール変更を行う必要はありません。現場で一番困っている場面を一つ選び、改善した結果を職員へ返すことが重要です。

職種別に「何を共有するか」を分けて考える

多職種連携では、全員が同じ情報を同じ深さで持つ必要はありません。大切なのは、患者対応や安全に必要な情報が、必要な相手へ漏れなく届くことです。

職種・役割 主に共有したい内容 確認ポイント
看護師 患者状態の変化、ケア上の注意、家族対応 変化・リスク・次の対応が簡潔に伝わっているか
医師 診療判断に必要な変化、緊急性、経過 結論と重要所見を先に伝えているか
リハビリ職 移動能力、活動時の変化、禁忌・注意事項 実施可否に影響する情報が共有されているか
医療事務・受付 予約、待ち時間、説明済み事項、患者・家族からの要望 対応履歴と次回対応者が分かるか
管理者 トラブル、相談案件、再発防止が必要な事例 個人対応で終わらず仕組みに反映できているか

この整理をしておくと、「情報共有を増やす」こと自体が目的にならず、必要な情報を必要な相手へ届ける設計に変えやすくなります。

よくある質問

院内コミュニケーション研修だけで改善しますか?

研修だけで改善するとは限りません。研修で共通言語をつくったうえで、申し送り、相談ルート、役割分担など現場の仕組みも同時に見直す必要があります。

多職種連携で最初にそろえるべきことは何ですか?

それぞれの職種が何を判断し、何を共有し、どこから相手へ引き継ぐのかを確認することです。役割の境界が曖昧なままでは、情報共有を増やしても混乱が残ります。

コミュニケーションが苦手な職員にはどう対応しますか?

個人の性格だけの問題にせず、報告の型や質問例を用意すると行動しやすくなります。短いロールプレイや実際の事例を使った振り返りも有効です。

医療安全の視点から院内コミュニケーションを考える

厚生労働省は、医療安全を高めるために、職員同士の経験共有、部門の壁を越えた意見交換、要点を押さえた確認などを重視しています。また、チーム医療についても、多様な医療スタッフが目的と情報を共有し、役割を分担しながら連携・補完することが重要だと示しています。

つまり、院内コミュニケーション改善は「職場の雰囲気を良くする活動」だけではありません。患者安全、情報共有、役割分担、勤務環境改善をつなぐ組織課題として扱うことが重要です。

直近では、日本看護協会が2026年10月1日に「2026年度 看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェア全国セミナー」の募集を開始し、2027年1月26日のセミナーでは「包括的指示」をテーマに掲げています。多職種連携を進める際は、単に仕事を分けるのではなく、誰が判断するのか、どの範囲まで任せるのか、例外時に誰へ確認するのかまで共通化することが、院内コミュニケーションと医療安全の両面で重要です。

  • 経験やヒヤリハットを部署内だけで閉じない
  • 職種間で目的と重要情報を共有する
  • 確認・復唱を医療安全行動として定着させる
  • 現場の負担が大きい場合は、勤務環境や業務分担も見直す

院内コミュニケーション改善で避けたい3つの失敗

  • 「もっと話し合おう」で終わる:誰が、何を、どこへ共有するかまで決めなければ再現性がありません。
  • 研修だけで解決しようとする:申し送り、記録、相談ルートなど業務設計も同時に見直します。
  • 個人のミスだけを責める:背景にある情報不足、役割の曖昧さ、相談しにくさまで確認します。

まとめ|院内コミュニケーションは「話しやすさ」だけでは改善しない

院内コミュニケーションを改善するには、仲の良さだけでなく、情報共有の型、相談基準、役割分担、確認行動、患者対応の共有を整える必要があります。

岩城成弘への講演・研修では、医療・介護現場のコミュニケーション、ホスピタリティ、OJT、管理職の関わり、多職種連携を、現場のケースに落とし込んで扱います。テーマや人数が未定でも、課題整理からご相談いただけます。

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参考情報
厚生労働省「令和8年版厚生労働白書」(2026年9月29日公表):公式ページ
厚生労働省「令和8年度 医療安全推進週間」:公式ページ
厚生労働省「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」:公式通知
厚生労働省「医療従事者の勤務環境の改善について」:公式ページ
日本看護協会「看護の専門性の発揮に資するタスク・シフト/シェアに関するガイドライン及び活用ガイド」:公式ページ

※本記事は2026年10月6日時点の公表情報をもとに、院内コミュニケーション改善の一般的な考え方を整理しています。医療安全、業務範囲、患者情報の取扱い等は、各医療機関の規程・法令・最新のガイドラインに沿って運用してください。

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