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看護師の離職防止|看護管理者が実践する7つの改善策【2026年】

「採用しても定着しない」「若手看護師が疲れているように見える」「看護師長が現場と経営の間で抱え込んでいる」。こうした課題は、採用活動だけでは解決しません。看護師の離職防止では、辞める人を引き留めるより前に、働き続けられる条件を職場側が整えることが重要です。

日本看護協会が2026年3月31日に公表した「2025年 看護職員実態調査」では、今後も看護職として働き続けたいと答えた人は62.9%で、2021年調査の67.6%から低下しました。20〜30代では就業継続意向が相対的に低く、病院勤務者でも他の勤務先より低い傾向が示されています。また、20〜30代の正規雇用職員では、超過勤務時間が短い人、有給休暇取得率が高い人ほど就業継続意向が高い結果でした。

さらに同調査では、看護職として働き続けるために重要な条件として「業務や役割、責任に見合った賃金」「休みがとりやすい」「職場の人間関係が良い」「希望する働き方ができる」が上位に挙がっています。

また、日本看護協会では2026年10月1日から10月21日まで「2026年 病院看護実態調査」を実施しており、全国の病院看護管理者を対象に、看護職員の採用・退職、休職、年間休日、有給休暇取得率などを継続的に把握しています。離職防止を考えるうえでは、感覚的な印象だけでなく、自院の残業・休暇・採用・退職データを継続して確認することが重要です。

この記事では、看護部長・看護師長・主任・人事担当者が、看護師の離職防止を「精神論」ではなく、現場で改善できる項目に分けて考えるための7つの視点を整理します。

看護師の離職防止は「採用後」の設計で決まる

離職防止というと、面談回数を増やす、福利厚生を充実させる、研修を実施するといった施策が挙がります。しかし、看護現場では一つの施策だけを導入しても十分ではありません。勤務負荷、人間関係、役割期待、患者対応、夜勤、教育、管理者支援が重なって職場体験をつくっているからです。

一般企業向けの離職防止策については「離職防止の具体的施策12選」でも解説していますが、看護現場では患者安全や多職種連携、夜勤、感情労働などを含めた設計が必要です。

看護管理者が確認したい7つの離職防止策

1.「忙しいのが普通」を前提にしない

看護師の離職防止に向けて業務負荷を見直す看護管理者とスタッフ

看護現場は忙しい。それ自体は事実です。しかし、「医療職だから忙しくて当然」「新人だから大変で当然」という前提が強くなりすぎると、改善できる負荷まで見過ごされます。

最初に確認したいのは、職員本人の根性ではなく、業務量、役割分担、残業、休憩、有給取得、夜勤回数、急な呼び出しなどの実態です。特に若手看護師については、超過勤務や休暇取得の状況を部署単位で見える化し、負荷が集中していないかを確認します。

  • 残業が特定の職員・病棟に偏っていないか
  • 休憩が「規定上ある」だけになっていないか
  • 有給休暇を申し出にくい空気がないか
  • 夜勤回数や勤務パターンに選択余地があるか

2.看護師長の「気づき」に頼らず、短い対話を仕組みにする

看護師の離職防止のため短時間1on1で対話する看護師長

退職のサインは、退職届を出す直前に始まるわけではありません。発言が減る、相談しなくなる、申し送り後に一人で残る、ミスを必要以上に怖がるなど、小さな変化として現れることがあります。

そこで有効なのが、長時間の面談だけに頼らない短い対話です。5分でも「最近どこが一番大変?」「今、誰に相談できている?」「困っているけれど言えていないことはある?」と確認するだけで、問題の早期発見につながります。

1on1のテーマや質問例は「1on1で話すことは?テーマ・質問例と話題が見つからないときの対処法」も参考にしてください。

3.「新人を育てる人」を一人にしない

新人看護師の離職防止では、新人本人だけでなく、プリセプター、教育担当、主任、看護師長の負担も見なければなりません。指導者が疲弊すると、教え方が厳しくなったり、関わる時間が減ったりし、結果として新人の孤立を生みます。

OJTは「先輩に任せる」ではなく、部署全体で育てる設計が必要です。新人が誰に何を聞いてよいか、指導者が困ったときに誰へ相談するか、教育進捗をどこで共有するかまで明確にします。

  • 新人の到達目標を細かく分ける
  • 教える内容と評価基準をそろえる
  • 指導担当者にも相談先をつくる
  • できていない点だけでなく、できるようになった点を共有する

4.人間関係を「相性の問題」で片づけない

離職防止に向けて悩みを抱える看護職へ周囲が声をかけ支えるイメージ

日本看護協会の調査でも、働き続ける条件として「職場の人間関係が良い」が上位に挙がっています。人間関係の問題は、単なる好き嫌いではありません。情報共有の仕方、注意の伝え方、役割の曖昧さ、相談しにくさなど、組織運営の影響を受けます。

特に看護現場では、安全確保のために厳しく伝える必要がある場面があります。厳しさそのものが問題なのではなく、人格否定になっていないか、理由が共有されているか、注意した後にフォローがあるかが重要です。

職場の情報共有については「コミュニケーションミスの原因と解決策」もあわせて確認できます。

5.患者・家族対応の負担を個人に背負わせない

患者ケアを担う看護職の負担をチームで支える必要性を示すイメージ

看護職は、患者さんやご家族の不安、怒り、焦りに向き合う感情労働でもあります。日本看護協会の「2025年 看護職員実態調査」では、この1年間に就業先で暴力・暴言・ハラスメントを受けた経験がある看護職員は49.3%でした。相手として「患者・利用者」は69.3%と最も多く、患者・利用者や家族から受けた割合は過去調査より上昇しています。

「患者さんだから仕方ない」と個人の我慢に任せると、職員は守られていないと感じます。患者対応の基本を高めることと、職員を守る線引きをつくることは両立します。

2026年10月の最新動向:日本看護協会は10月1日、看護職への暴言・暴力・ハラスメントに関する発信を更新し、同日から厚生労働省委託の「医療従事者向けカスタマーハラスメント実態調査」への協力案内も掲載しています。調査対象には看護師・准看護師・看護補助者などが含まれています。離職防止では、患者対応力の向上だけでなく、暴言・威圧・長時間拘束などを個人対応で終わらせない仕組みを確認する必要があります。日本看護協会「看護現場におけるハラスメント対策」

患者さんとの信頼構築については「看護に必要なホスピタリティ|信頼を築くコミュニケーションスキルとは」で詳しく解説しています。患者・家族からの暴言や威圧への組織対応については、「クリニックのカスハラ対策」もあわせて確認できます。

6.「給与では変えられないから仕方ない」で止まらない

看護職として働き続けるための条件として、職責に見合った賃金が最上位に挙がっています。給与や手当は重要で、研修やコミュニケーションだけで代替できるものではありません。

一方で、現場管理者がすぐに変えられない制度があるからこそ、「何もできない」と考えないことも大切です。休みやすさ、相談のしやすさ、業務分担、声のかけ方、評価の伝え方、希望の聞き方など、現場から変えられる項目はあります。

変えにくい制度と、明日から変えられる職場行動を分けて考える。これが離職防止を現実的に進める第一歩です。

7.看護師長・主任自身を孤立させない

看護師長や主任は、患者対応、スタッフ育成、勤務調整、医師や他部署との連携、事故対応など、多くの責任を抱えています。部下の離職防止を考える一方で、管理職本人が限界に近づいていることもあります。

管理者が相談できる上位者、横の管理者同士の対話、判断を共有できる会議体を用意し、「管理職だから一人で処理する」という状態をつくらないことが必要です。

職場の中だけでキャリア支援を完結させない

日本看護協会は2026年10月1日、看護職のキャリア情報を一元的に確認・管理できる「NuPS(ナップス)」を公開しました。就業中の看護職が自身の経歴や資格、研修履歴を確認でき、ナースセンターへの相談にもつながる仕組みです。

離職防止というと「今の職場に残ってもらうこと」だけを考えがちですが、本人が自分のキャリアを整理し、将来の働き方を考えられる環境をつくることも重要です。院内面談だけで抱え込まず、必要に応じて外部の相談先や公的なキャリア支援情報も案内できる状態にしておくと、本人にとって選択肢の見通しが立ちやすくなります。

引き留めることより、働き続けられる選択肢を一緒に整理する。この視点は、若手看護師やライフステージの変化を迎える職員への支援でも重要です。

看護師の離職防止チェックリスト

  • □ 部署別の残業・休暇取得・夜勤負荷を把握している
  • □ 若手職員と短い対話を定期的に行っている
  • □ 新人指導者にも相談先がある
  • □ 注意・指導の基準が人によって大きく違わない
  • □ 患者・家族からの暴言や威圧を一人で抱え込ませない
  • □ 看護師長・主任が相談できる仕組みがある
  • □ 退職理由だけでなく「働き続けられている理由」も聞いている
  • □ 改善できない制度と、現場で改善できる行動を分けている

離職防止で最初に見る5つの職場指標

離職防止を「雰囲気」だけで考えると、対策が属人的になりやすくなります。日本看護協会の2026年病院看護実態調査でも、採用・退職、休職、年間休日、有給休暇取得率などを継続的に把握しています。自院でも、少なくとも次の5項目は部署単位で確認し、前月・前年と比較できる状態にしておくと改善点を見つけやすくなります。

指標 確認するポイント 改善の着眼点
退職・異動 年代・経験年数・部署に偏りがないか 同じ層が続けて離れていないかを確認する
残業 特定の職員や病棟へ集中していないか 業務分担、記録、申し送りの流れを見直す
休暇取得 取得率だけでなく申請しやすさに差がないか 管理者の声かけや勤務調整のルールをそろえる
相談行動 困ったときに相談できる相手が明確か 新人・若手・指導者それぞれの相談先を決める
患者・家族対応 暴言・威圧・長時間対応が個人に偏っていないか 一人対応を終了する基準と管理者への引き継ぎを定める

数字を集めることが目的ではありません。「どの部署で」「誰に」「何が偏っているか」を確認し、翌月に一つ改善できる状態へつなげることが重要です。

2026年9月の公開事例でも、部署別の課題を可視化し、管理者の声かけや職場改善へつなげる取り組みが紹介されています。一施設の事例をそのまま一般化することはできませんが、離職防止では「全院一律の施策」だけでなく、病棟・部署ごとの差を見て具体的な行動へ落とし込む視点が重要です。

離職防止は「単発施策」ではなくPDCAで回す

厚生労働省は、看護職員の確保・定着促進に向けて、医療勤務環境改善支援センターなどを通じ、医療機関が勤務環境改善を計画的に進めることを支援しています。離職防止も、研修を一度実施して終わるのではなく、現状把握、改善策の実施、結果確認、再調整を繰り返す方が実効性を高めやすくなります。

  1. 現状を測る:残業、休暇、夜勤負荷、退職・休職、相談件数などを確認する
  2. 改善対象を絞る:すべてを一度に変えず、負担が大きい部署や場面を一つ選ぶ
  3. 小さく実行する:勤務調整、面談方法、OJT、患者・家族対応など、現場で変えられる項目から着手する
  4. 翌月に結果を見る:数値だけでなく、職員の声や相談行動が変わったかを確認する
  5. 続ける・修正する:効果があれば標準化し、効果が弱ければ原因を見直す

制度や人員配置の変更には時間がかかることがあります。その場合も、「何を確認しているか」「いつまでに回答するか」を職員へ返すことで、放置されている感覚を減らせます。

勤務環境改善については、厚生労働省の「看護職員の確保」も参考になります。

離職の兆候を感じたときの48時間対応フロー

「最近発言が減った」「急に欠勤が増えた」「退職を考えているようだ」と感じたとき、管理者が慌てて引き留めると、本人がさらに話しにくくなることがあります。まずは辞める・辞めないの結論を求めず、負担の原因と安全面を整理します。

  1. 本人の状態を確認する:体調や勤務継続に無理がないかを確認し、緊急性がある場合は休養や専門窓口への接続を優先する。
  2. 事実と感情を分けて聞く:「何が起きているか」と「どう感じているか」を分け、評価や説得を急がずに聞く。
  3. 48時間以内に一つ対応を返す:勤務調整、相談先の設定、指導体制の見直しなど、すぐ動ける項目を一つ決めて本人へ返す。
  4. 1〜2週間後に再確認する:対応した結果、負担が減ったか、別の課題が出ていないかを短時間で確認する。

重要なのは「辞めないで」と頼むことではなく、声を出した後に職場がどう動いたかを見せることです。すぐに変えられない制度がある場合も、何を確認中なのか、いつ回答できるのかを伝えることで放置感を減らせます。

30日で始めるなら、最初にすること

期間 実施すること
1週目 部署別の残業・休暇・夜勤・退職理由を整理する
2週目 看護師長・主任・教育担当から「今の困りごと」を聞く
3週目 若手職員への短時間ヒアリングを行う
4週目 すぐ変えられる改善策を1〜2個実施し、翌月に振り返る

重要なのは、大規模な制度変更から始めないことです。現場で負担が大きい箇所を一つ見つけ、小さく改善し、その結果を職員へ返す。この積み重ねが「声を出しても何も変わらない」という諦めを減らします。

よくある質問

看護師の離職防止で最初に見直すべきことは何ですか?

まずは残業、休暇取得、夜勤負荷、人間関係、相談先、新人教育の状況を確認してください。退職者への聞き取りだけでなく、今働き続けている職員に「なぜ続けられているか」を聞くことも有効です。

研修だけで離職率は下がりますか?

研修だけで離職率が下がるとは限りません。勤務条件や人員配置、処遇など構造的な課題がある場合は、組織としての改善が必要です。研修は、管理職の関わり方やチーム内のコミュニケーション、OJTの質を改善する手段として位置づけることが重要です。

新人看護師にはどのような支援が必要ですか?

業務習得の支援だけでなく、相談相手の明確化、達成できたことのフィードバック、指導者間の基準統一が重要です。また、新人を支える指導担当者自身へのフォローも欠かせません。

まとめ|「辞めないで」ではなく「働き続けられる職場」をつくる

看護師の離職防止は、本人の我慢や使命感に頼るものではありません。職責に見合う処遇、休みやすさ、人間関係、柔軟な働き方、相談できる環境など、職場側が整えるべき条件があります。

一方で、すべてを一度に変える必要もありません。まずは、現場の声を聞き、変えられるものから一つずつ改善すること。管理者自身も抱え込まないこと。そして患者さんへの質の高い対応と、職員が安心して働ける環境を両立させることが重要です。

岩城成弘への講演・研修では、看護・介護・医療現場のコミュニケーション、ホスピタリティ、管理職の関わり方、チームづくりを、現場で使える言葉とケースに落とし込んで考えます。テーマや人数が未定の段階でも、課題整理からご相談いただけます。

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参考情報
日本看護協会「2025年 看護職員実態調査」結果:公式資料
日本看護協会「2026年 病院看護実態調査」:公式ページ
日本看護協会「看護職のためのポータルサイトNuPS(ナップス)」:公式ページ

※本記事は2026年10月6日時点の公表情報をもとに作成しています。労務管理・処遇・就業規則等の個別判断は、各医療機関の状況に応じて専門家へご確認ください。

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