コンプライアンス研修を任されたものの、「何を扱えばよいかわからない」「毎年実施しているが、社員の行動が変わらない」と悩む担当者もいるのではないでしょうか。
コンプライアンス研修の目的は、ルールを覚えてもらうことだけではありません。社員一人ひとりが判断に迷ったときに立ち止まり、自ら考えて適切に行動できる状態をつくることが重要です。
この記事では、コンプライアンス研修の目的や主なテーマ、実施手順、効果を高めるポイントを解説します。

監修者:岩城成弘(いわしろ あきひろ)
スターバックスコーヒーやウォルト・ディズニー・ジャパンでの豊富な実務経験を活かし、日本全国の企業や教育機関などで、ホスピタリティ研修を開催している。特に、ディズニー流の「おもてなし」を基軸にした、企業のブランド価値を高める研修が人気。実践的かつ成果につながる指導が、多くの企業から高い評価を受けている。
コンプライアンス研修とは

コンプライアンス研修とは、企業や組織で働く人が、守るべきルールや考え方を理解し、日々の業務で適切に判断・行動するための研修です。
コンプライアンスは「法令遵守」と訳されますが、法律を守ることだけを意味するものではありません。社内規則や社会規範、モラル、企業倫理なども含まれます。
たとえ法律に触れなくても、顧客や取引先、社会からの信頼を損なう行動は、コンプライアンス上の問題になる可能性があります。「法律に違反していないから問題ない」と考えるのではなく、自分の行動が周囲へ与える影響まで考えることが大切です。
コンプライアンス研修を実施する主な目的は、次のとおりです。
- 違反や不祥事を未然に防ぐ
- 判断に迷ったときの行動基準を身につける
- 問題を早期に相談・報告できるようにする
- 社員と企業、お客様からの信頼を守る
- 違反が起こりにくい組織風土をつくる
なお、「コンプライアンス研修」という名称の研修すべてが、一律に法律で義務づけられているわけではありません。一方、職場のハラスメント防止については、事業主の方針を労働者へ周知・啓発することなどが求められています。また、個人データを扱う従業者への適切な教育も、安全管理措置の一つです。
研修テーマを決める際は、自社に関係する法律や公的ガイドラインを確認しましょう。
参考:職場におけるハラスメントの防止のために|厚生労働省
参考:個人情報保護法ガイドライン|個人情報保護委員会
コンプライアンス研修で扱う主な内容

研修で扱うテーマは、企業の業種や課題、受講者の役職によって異なります。代表的な内容は以下のとおりです。
| テーマ | 主な内容 |
|---|---|
| コンプライアンスの基礎 | 法令、社内規則、社会規範、企業倫理 |
| ハラスメント | パワハラ、セクハラ、適切な指導との違い |
| 情報管理 | 個人情報、機密情報、端末やデータの取り扱い |
| SNS | 不適切な投稿、写真掲載、情報漏えい、炎上 |
| 不正行為 | 改ざん、横領、不適切な贈答、利益相反 |
| 労務管理 | 労働時間、安全配慮、健全な職場環境 |
| 違反発生時の対応 | 相談、報告、初期対応、再発防止 |
すべての社員へ同じ研修を行うのではなく、階層に合わせることも大切です。
新入社員向けであれば、社内ルールやSNS、個人情報の取り扱いなど、社会人として知っておきたい基礎を中心にします。一般社員には、現場で起こりやすい違反や、判断に迷った場合の相談方法を伝えましょう。
管理職向けの研修では、ハラスメントと適切な指導の違い、部下から相談を受けた際の対応なども欠かせません。経営者や役員には、ガバナンスや内部統制、問題発生時の説明責任を含める必要があります。
自社に合った内容を選ぶには、過去のトラブルやヒヤリハット、社内アンケート、相談窓口へ寄せられた内容などを確認するのが効果的です。
新人研修全体の設計方法については、以下の記事で詳しく解説しています。気になる方は、ご一読ください。
コンプライアンス研修の進め方

ココンプライアンス研修の効果を高めるには、自社の課題を把握したうえで、対象者や目的に合った内容を設計することが重要です。また、研修は実施して終わりではなく、効果を検証しながら継続的に改善する必要があります。ここでは、コンプライアンス研修を企画・実施する手順を4つに分けて解説します。
1.自社の課題を洗い出す
まずは、自社にどのようなリスクがあるのかを明確にします。
過去のトラブルだけでなく、事故には至らなかったヒヤリハットや、現場で判断に迷いやすい場面も確認しましょう。
業種や職種によって起こりやすい問題は異なるため、一般的なテーマを並べるだけでは不十分です。
2.対象者と目標を決める
次に、誰を対象に、どのような行動を身につけてもらうのかを決めます。
例えば、「コンプライアンスへの理解を深める」だけでは、研修の成果を判断しにくくなります。
「迷ったときに自己判断で処理せず、上司や相談窓口へ報告できる」など、研修後の行動がわかる目標を設定しましょう。
3.研修方法を選ぶ
基礎知識を広く伝える場合は、座学やeラーニングが適しています。
一方、現場での判断力を養うには、ケーススタディやグループワークが有効です。
社員の意識や組織風土まで見直したい場合は、外部講師による対話型研修や、自社の課題に合わせたオーダーメイド研修を検討するのも良いでしょう。
参加者同士の対話を促すワークショップの実施方法については、以下の記事もご覧ください。
4.効果を測定して改善する
研修後は、理解度テストやアンケートを実施します。
ただし、「わかりやすかった」という感想だけで効果を判断してはいけません。
数か月後の行動や相談状況、ヒヤリハットの変化なども確認し、次回の研修内容へ反映させましょう。
形だけの研修にしないための3つのポイント

コンプライアンス研修は、実施するだけでは社員の意識や行動の変化につながりません。
受講者が内容を自分事として捉え、現場で実践できるようにするための工夫が必要です。
ここでは、形だけの研修にしないための3つのポイントを解説します。
現場に近い事例を使う
自社の仕事とかけ離れた事例では、受講者がコンプライアンスを自分事として捉えにくくなります。
例えば、「上司から社内ルールに反する可能性のある処理を急いで行うよう指示されたら、どうするか」など、誰もが直面し得るグレーゾーンを扱いましょう。
ルールが存在する目的を伝える
禁止事項だけを並べると、社員はコンプライアンスを「仕事を制限するもの」と感じてしまいます。
なぜそのルールがあるのか、誰の安全や信頼を守るものなのかまで伝えることが重要です。
企業理念と日々のルールを結びつければ、想定外の状況でも判断しやすくなります。
対話を通して自ら考えてもらう
講師が正解を一方的に教えるだけでは、知識の習得で終わる可能性があります。
ケーススタディを使い、「誰にどのような影響があるか」「自分だけで判断してよいか」「誰に相談すべきか」を話し合ってもらいましょう。
自分の言葉で判断理由を説明することが、現場での行動につながります。
自分と相手の双方を尊重しながら意見を伝える方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
テーマパーク流人財育成に学ぶコンプライアンス

テーマパークのルールには、お客様とスタッフの安全や安心を守る目的があります。
しかし、ルールを暗記するだけでは、マニュアルにない状況へ柔軟に対応できません。
企業のコンプライアンスも同じです。
社員がルールの背景や企業の大切にする価値を理解してこそ、状況に応じて自ら適切な行動を選べるようになります。
コンプライアンスとホスピタリティには、「自分の都合だけでなく、相手や周囲への影響を考える」という共通点があります。
罰則や監視によって「守らせる」のではなく、ルールの目的に納得し「自ら守る」人財を育てることが、違反を防ぎ、組織への信頼を高めることにつながります。
コンプライアンス研修に関するよくある質問

コンプライアンス研修は、実施するだけでは十分な効果を得られません。
社員一人ひとりの意識と行動の変化につなげるためには、受講者が内容を自分事として捉えられる工夫が必要です。
ここでは、形だけの研修にしないための3つのポイントを解説します。
コンプライアンス研修はどのくらいの頻度で行うべきですか?
適切な頻度は、業種や扱う情報、社内の課題によって異なります。
定期研修に加え、入社・昇進・法改正・社内ルールの変更・問題発生などのタイミングで実施するとよいでしょう。
一度に多くの情報を伝えるのではなく、テーマを分けて継続的に学ぶ方法も効果的です。
オンライン研修でも効果はありますか?
基礎知識の習得や全社員への周知には、オンライン研修やeラーニングも活用できます。
ただし、受講者が内容を自分事として考えるには、確認テストやケーススタディ、少人数での対話などを組み合わせることが大切です。
社員が自ら適切に行動できる研修を実施しよう
コンプライアンス研修では、自社の課題と対象者に合ったテーマを選び、現場に近い事例を取り入れることが重要です。
目指すべきなのは、ルールを暗記しているだけの状態ではありません。
ルールの目的を理解し、判断に迷ったときに立ち止まり、相談し、適切に行動できる人財を育てることです。
MCSCでは、大手テーマパークで培った人財育成の考え方をもとに、社員一人ひとりの主体的な判断と行動を促す研修を提供しています。
「毎年研修を実施しているが、社員の行動が変わらない」「自社に合った研修内容がわからない」とお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

