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ターミナルケアで大切なこと:医療・介護現場での実践ガイド

ターミナルケアは、患者さんの尊厳を守りながら、身体的・精神的な苦痛を和らげ、その人らしい最期を支える役割を担っています。この記事では、ターミナルケアの基本からホスピタリティに基づいた実践アプローチまで、医療・介護現場で活かせるガイドを紹介します。

監修者:岩城成弘(いわしろ あきひろ)

スターバックスコーヒーやウォルト・ディズニー・ジャパンでの豊富な実務経験を活かし、日本全国の企業や教育機関などで、ホスピタリティ研修を開催している。特に、ディズニー流の「おもてなし」を基軸にした、企業のブランド価値を高める研修が人気。実践的かつ成果につながる指導が、多くの企業から高い評価を受けている。

ターミナルケアの基本

ターミナルケアとは、患者さんが人生の最終段階を迎える際、その人らしい最期を過ごせるよう支援する医療・介護の一環です。近年は病院だけでなく、介護施設や自宅で行われるケースも増加しています。

ターミナルケアを実践する際には、患者さんにとって最も居心地の良い環境で、穏やかな時間を過ごせるよう配慮することが何よりも重要です。

ここからは、ターミナルケアが必要となる状況や、似た概念である緩和ケアとの違いについて詳しく見ていきましょう。

ターミナルケアが必要となる状況

通常の治療と同様、ターミナルケアを受けるか判断するのは、患者さん本人や家族の意思です。しかし、ターミナルケアを始めることは「延命をあきらめる」という選択を含むため、その決断には慎重さが求められます。

特に、以下のシーンではターミナルケアの導入が検討されます。

  • 医師から余命宣告を受けた場合
  • 身体的症状が重篤化した場合
  • 精神的な苦痛が増し回復が見込めない場合

ターミナルケアは、患者さんと家族が穏やかな最期を迎えられるよう支援する役割を担っています。

ただ延命するのではなく、患者さんの苦痛を和らげるとともに、安心できる環境でQOL(生活の質)の向上を目指すことが、ターミナルケアの中心的な目的です。

医療従事者や介護者がチームとして連携し、患者さん本人の意思を尊重しながらケアを行うことで、患者さんが自身の価値観や希望に沿った最期を迎えられるようサポートします。

緩和ケアとの違い

緩和ケアは、病気の進行度に関係なく、患者さんの苦痛を和らげるケアです。一方、ターミナルケアは「回復が見込めない終末期」に特化しています。両者は密接に関連していますが、ターミナルケアでは看取りを見据えたアプローチが重視される点が大きな違いです。

ターミナルケアと緩和ケアの違いを以下の表にまとめました。

項目ターミナルケア緩和ケア
適用される段階回復が見込めない終末期に特化している。病気の初期から終末期まで、進行度に関係なく提供される。
目的患者さんが「自分らしい最期」を迎えられるよう支援すること。痛みや苦しみを軽減し、QOL(生活の質)を向上させること。
ケアの範囲身体的・精神的ケアに加え、看取りや家族への支援を含む包括的なケア。痛みや苦しみの緩和に重点を置くが、広範囲のケアも提供。

また、患者さんが自宅で過ごしたい場合の環境整備や、家族への心理的支援がターミナルケアの重要な役割です。さらに、患者さんの希望を叶える環境整備や心のケアが含まれており、これも緩和ケアとターミナルケアの違いです。

ターミナルケアで大切なこと

ターミナルケアでは、患者さんや家族が安心して最期の時間を迎えられるよう、細やかな配慮が求められます。患者さん一人ひとりの価値観や希望に寄り添いながら、苦痛を和らげ、その人らしさを尊重したケアを提供しましょう。

患者本人の意思を尊重したホスピタリティ

患者さんの希望や価値観を最優先に考え、自己決定権を守ることはターミナルケアの基本です。たとえ医療的に最善と思われる選択肢があっても、患者さん本人の意思を尊重し、その人らしい最期を支える環境づくりを心がけなければいけません。

例えば、患者さんが「家に帰りたい」と訴えた場合には、「一緒にどうすれば実現できるか考えていきましょう」といった共感と前向きな提案を含む言葉がけが効果的です。

また、家族が不安を抱えている際には、「どんな小さなことでもご相談ください。私たちが全力でサポートします」といった安心感を与える言葉を伝える必要があります。患者さんの望みを叶えるためのチーム力が問われるところです。

家族との信頼関係構築

ターミナルケアにおいて、家族は患者さんのケアを支える大切な存在です。そのため、家族の不安や負担を軽減するためのサポートが重要です。

例えば、患者さんの状態を適切に説明したり、今後のケアの計画を共有したりすることで、家族に安心感を与えることができます。また、家族が患者さんとの時間を後悔なく過ごせるよう、心の準備を支援することも大切です。

さらに、医療・介護スタッフと家族が信頼関係を築くためには、家族の話を傾聴し、丁寧なコミュニケーションをとることが欠かせません。こうした配慮によって、家族がケアに主体的に関わることができ、患者さんにとって安心できる環境が整います。

身体的・精神的ケアを通じたQOLの向上

ターミナルケアでは、患者さんの身体的な苦痛を和らげることが重要視されます。

例えば、痛みを緩和するための医療ケアや、呼吸を楽にするための環境調整が挙げられます。また、精神的な安定を図るために、患者さんが安心感を得られるコミュニケーションを重視した対応も重要です。

さらに、患者さんが抱える不安や孤独感に寄り添う心理的サポートを提供することで、心の平穏を保つお手伝いができます。これらの身体的・精神的ケアは、ターミナルケアの中心となるもので、患者さんが穏やかに過ごせる土台を作る大切な役割があります。

現場での実践的なアプローチ

ターミナルケアを実践する現場では、患者さんとその家族に寄り添いながら、具体的なケアの提供が求められます。ここでは、日々の現場で役立つ実践的なアプローチを解説します。

残された時間を有意義にするための工夫

患者さんが残された時間を有意義に過ごすためには、その人の希望や価値観を理解し、それを尊重することが重要です。具体的には、患者さんがやりたいことや大切にしたい時間を実現するための支援を行います。

例えば、家族と自宅で過ごすことを希望する場合には、在宅ケアの体制を整え、日常生活をサポートします。また、趣味や好きな音楽、写真整理など、患者さんが「今できる楽しみ」を見つけられるよう手助けすることも効果的です。これにより、患者さん自身が「自分らしい時間」を過ごせるようになり、満足感のある生活を送れるようになります。

快適な療養空間の確保

ターミナルケアでは、患者さんが過ごす空間の快適さに配慮することも重要です。居室の温度・湿度・明るさの調整や、家族との時間を大切にできる空間づくりを心がけましょう。また、プライバシーへの配慮も欠かせません。

患者さんの状態に応じて環境を整えたり、訪問者を適切に調整したりすることも必要です。また、経済的・社会的な問題に対応するためのソーシャルワーカーの配置も検討しましょう。

看取り期のケアとグリーフケア

看取り期には、患者さんが穏やかな最期を迎えられるよう、身体的な苦痛の緩和と精神的な安心感を提供することが大切です。

例えば、宗教的・文化的な希望を尊重し、患者さんが「自分らしく」過ごせる配慮を行います。そのためには、家族と協力し患者さんの言葉や表情に耳を傾けながら、最期の時間を大切にする姿勢が求められます。

また、看取り後には、家族へのグリーフケア(悲嘆ケア)が必要です。孤立を防ぐため、カウンセリングや地域のサポートグループを紹介するなど、心のケアを継続的に提供します。この支援は、家族が悲しみを乗り越え、新しい生活を始める助けとなります。

ターミナルケアで大切なことを実践に活かすために

ターミナルケアでは、患者さんと家族の両方に寄り添い、その人らしい最期を支えることが求められます。ホスピタリティを軸にした信頼関係の構築、多職種連携、快適な環境づくりを通じて、質の高いケアを実施することが大切です。

医療・介護の現場では、日々の業務に追われ、理想的なケアを提供できない状況も少なくありません。しかし、ターミナルケアの質を高めるためには、スタッフ一人ひとりが専門知識とホスピタリティマインドを持ち、チームとして連携することが不可欠です。

ターミナルケアの研修を実施することは、スタッフ全体が患者さんや家族により良いケアを提供できる体制を整える一歩となるでしょう。施設内だけで完結した研修には限界もあるため、外部研修も視野に入れるのもおすすめです。

MCSCは、過去に医療機関向けにホスピタリティ研修を実施した実績もございます。外部講師によるターミナルケア研修を検討している方は、ぜひ一度お問合せください。

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