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介護施設の看取りケア|家族対応・多職種連携とターミナルケアの実践

監修:岩城成弘

※本記事は研修・接遇・組織運営・コミュニケーションの観点から整理した一般情報であり、個別の診断・治療・看護判断・介護方針・法的判断を提供するものではありません。看取りや療養上の対応は、本人の意思、医師・看護師等の専門的判断、各施設の規程・方針を踏まえてご判断ください。

ターミナルケアで利用者の穏やかな生活を支える介護のイメージ

介護施設の看取り・ターミナルケアでは、終末期の利用者さまへの身体的・精神的な支援だけでなく、家族への説明と不安への対応、介護職・看護師・医師の情報共有、急変時の連絡ルートまで含めて体制を整えることが重要です。

本記事は、介護職・施設管理者が「介護施設の看取り」を現場で実践するための記事として、家族対応と多職種連携を中心に整理します。ターミナルケア全体の基本概念や医療・介護共通の考え方を確認したい方は、「ターミナルケアで大切なこと|医療・介護現場での実践ガイド」をご覧ください。

ターミナルケアとは

ターミナルケアと緩和ケアの違いを考える介護・医療現場のイメージ

ターミナルケアは、主に人生の最終段階における支援を指します。一方、緩和ケアは終末期だけのものではなく、がんなどの病気に伴う身体的・心理的なつらさに対し、診断時から治療と並行して提供されることがあります。ここでは両者の考え方と開始時期の違いを整理します。

ターミナルケアと緩和ケアの違い

ターミナルケアとは、病気や老衰などで死期が近い方に対し、残された時間を自分らしく心穏やかに過ごし、満足して最期を迎えることを目的とするケアの総称です。ターミナルとは「終末期」を意味します。治療の継続や変更を一律に決めるものではなく、本人の意思と医療・ケアチームによる判断を尊重しながら、苦痛や不快感の緩和と生活の質(QOL)を大切にします。

一方の緩和ケアは、生命を脅かす病気に伴う痛みや息苦しさ、不安などのつらさを和らげ、本人と家族のQOL向上を目指すケアです。がんに限らず幅広い疾患が対象となり、診断時から治療と並行して提供されることがあります。ターミナルケアは主に人生の最終段階における支援を指す言葉として使われますが、実際の支援内容や開始時期は本人の状態や希望に応じて個別に検討されます。

ターミナルケアが始まるタイミング

ターミナルケアは、病気や老衰などで人生の最終段階にある方に対し、苦痛を和らげながら本人らしい生活とQOL(生活の質)を支えるケアです。
開始時期に一律の基準はありません。本人の病状・価値観・意思を踏まえ、医療・ケアチームと、必要に応じて家族等が繰り返し話し合いながら方針を検討します。ターミナルケアを開始することは、一律に延命治療を中止することを意味するものではありません。

ターミナルケアの開始時期は、特定の症状だけで一律に決めるものではありません。食事量の低下、ADLの変化、呼吸状態、認知機能、基礎疾患の進行などを総合的に確認し、本人の意思を尊重しながら医師・看護師・介護職などの多職種で検討します。人生の最終段階における医療・ケアの方針は、本人による意思決定を基本とし、本人の意思が確認できない場合も推定意思や家族等の意向を踏まえ、医療・ケアチームで慎重に判断します。

ターミナルケアにおける介護職の役割

ターミナルケアにおける介護職の身体的・精神的・社会的支援のイメージ

ターミナルケアにおいて、介護に携わる方には、身体的、精神的、社会的な3つのケアを行うことが求められます。また、ケアを受ける方にとって良き理解者となり、精神面で支えていくことも重要です。

介護職が担う3つのケア

ターミナルケアにおいて介護職が担う主なケアは、身体的ケア、精神的ケア、社会的ケアの3種類に分けられます。
身体的ケアは、入浴、清拭、排泄、食事などの日常生活上の介助を行い、褥瘡(床ずれ)予防のための体位変換などで身体的な苦痛を軽減します。精神的ケアとは、死への恐怖や不安、社会的な疎外感に寄り添い、傾聴や声掛けを通じて孤独感を和らげる目的で実施するケアです。

また、社会的ケアでは、利用者さんやご家族の経済的負担やストレスを軽減できるよう、専門職(医療ソーシャルワーカーなど)と連携し、家族とのコミュニケーションを通じてサポートします。いずれのケアにおいても、利用者さんやご家族の希望を尊重した思いやりのあるケアが最も大切です。

患者(利用者)さまの理解者になる

ターミナルケアにおいて、介護職は利用者さまの重要な理解者となることを目指しましょう。終末期にある利用者さまは、死に対する恐怖や不安、そして役割の喪失による社会的疎外感といった複雑な思いを抱え、精神面のバランスが崩れやすい状況にあります。

介護職には、死を目前にした心理的な変化を理解した上で、そのさまざまな感情に寄り添う姿勢が求められます。ベッドサイドで傾聴や会話の機会を増やし、孤独感や不安感を取り除くように支援することが重要な役割です。

コミュニケーションが難しい状態であっても、本人の反応や状態を観察しながら、声掛けや触れ方など負担にならない方法で関わりを続けることが大切です。反応の有無だけで理解度を決めつけず、必要に応じて医療職と相談しながら対応します。利用者さまやご家族の希望を尊重し、思いやりのあるケアを通じて、穏やかな最期を支えるための精神的な平穏を確保しましょう。

ターミナルケア介護の方法

終末期の利用者に寄り添い傾聴するターミナルケアのイメージ

ターミナルケアにおける介護では、相手に寄り添うコミュニケーションや日常生活でのストレスケア、医療連携などが重要です。ここでは、ターミナルケア介護の具体的な方法をご紹介します。

傾聴と寄り添いのコミュニケーション

ターミナルケアでは、利用者さまが精神的な平穏を保ち、満足して最期を迎えるため話をじっくりと聞き、寄り添う姿勢が大切です。終末期の利用者さまは、死への恐怖や不安、また役割の喪失による社会的疎外感など、複雑な思いを抱えており、精神面のバランスが崩れやすい状況にあります。

介護職には、終末期にある方が示す感情の変化には個人差があることを理解した上で、その時々の思いに寄り添い、心を受け止めたコミュニケーションを心がけることが求められます。代表的な説明モデルとして、否認・怒り・取り引き・抑うつ・受容の5段階が紹介されることがありますが、すべての人が同じ順序で進むわけではありません。

  • 第1段階「否認と孤立」:診断や死の宣告を否定し、「まさか」と信じられず、周囲から孤立する。
  • 第2段階「怒り」:死が避けられない現実だと認識し始め、「なぜ自分だけが」と他者や状況に対して怒りを感じる。
  • 第3段階「取り引き」:死を逃れるため、神や奇跡に「もし~したら~します」と取り引きを持ちかけようとする。
  • 第4段階「抑うつ」:どんな取り引きも無駄だと悟り、死を目前にして深い悲しみや絶望を感じる。
  • 第5段階「受容」:死を避けられない現実として受け入れ、心に平穏が訪れる。

相手の話をよく聞き、受け止める姿勢が大切です。すべての感情を理解することは困難でも、理解しようとする姿勢は安心感につながります。傾聴や信頼構築の基本は、「看護に必要なホスピタリティ|信頼を築くコミュニケーションスキルとは」でも整理しています。

日常生活でのストレスケア

ターミナルケアでは、本人の意思と医学的な妥当性を踏まえながら、苦痛の緩和やQOL(生活の質)を大切にします。医療・ケア行為の開始・不開始・変更・中止は一律に決めるものではなく、医療・ケアチームで個別に検討します。日常生活におけるストレスを軽減することは、心穏やかな最期を迎えるための重要な要素です。

介護職は、着替えや排泄、移動といった日常行為で利用者さんがストレスを感じないよう環境を整える役割を担います。具体的には、全身の清拭(せいしき)で体を清潔に保ち、身だしなみを整えることで、残された日々を明るく過ごすために大切なケアです。

精神的なストレスケアとして、好きな音楽や思い出の品を身近に置き、リラックスできる環境を作り、孤独感を和らげるために家族や友人と過ごす時間を十分に作ることも意識しましょう。

体調管理と医療連携

ターミナルケアで介護職と医療職が体調変化を共有し連携するイメージ

ターミナルケアでは、利用者さまのバイタル測定や全身状態の変化を細やかに観察し、その情報を正確に記録・報告することが体調管理において重要です。終末期は容態が急変しやすく、体調が変化する時期であるため、利用者さんの細かな変化をいち早く捉え、看護師や医師と密接に連携することが、苦痛を最小限に抑えたケアを実現する上で不可欠です。

医療行為は医療職が行いますが、褥瘡予防のための安楽な姿勢を整える体位変換や、嚥下機能に配慮した食事介助など、生活面のケアを通じて安全な療養環境づくりに貢献するのが介護職です。多職種がチームで連携し、利用者さまの最期の希望を尊重したケアを提供しましょう。報告・相談の行き違いを減らす考え方については、「コミュニケーションミスの原因と解決策|今日から使える防止策3選」も参考になります。

ターミナルケアで介護職が確認したい5つのポイント

  • 本人・家族の希望がチーム内で共有されているか
  • 痛み・呼吸・食事・排泄などの変化を誰へ報告するか明確か
  • 介護職だけで判断せず、看護師・医師へ相談する基準が決まっているか
  • 声かけや傾聴が「作業の合間」になっていないか
  • ケア後に職員同士で振り返り、抱え込みを防げているか

介護施設の看取りを「入居前から看取り後」までつなぐ確認表

看取りは最期の数日だけの対応ではありません。本人・家族の希望確認、日々の情報共有、急変時の連絡、看取り後の振り返りまでを一つの流れとして整えておくと、職員ごとの対応差を減らしやすくなります。

段階施設で確認すること主な連携相手
入居・平常時本人の価値観、家族の希望、緊急連絡先、医療方針の確認方法を整理する本人・家族・ケアマネジャー
状態変化時食事量、呼吸、疼痛、意識、ADLなどの変化を記録し、誰へ報告するかを明確にする看護師・医師・管理者
看取り期ケア方針、家族への説明内容、夜間・急変時の連絡手順を職種間でそろえる医師・看護師・介護職・家族
最終段階本人の尊厳、家族の付き添い希望、苦痛の観察、必要な医療職への連絡を優先する医師・看護師・家族
看取り後家族への声かけ、職員の振り返り、対応上の課題、次回に改善する点を共有する家族・施設管理者・多職種

東京都の施設向け看取り支援手引きでも、多職種連携と施設内研修を通じた体制整備が重視されています。また、2026年度の介護施設向け研修でも、家族からの相談支援、他施設・多職種との情報共有・連携が扱われています。

家族対応でそろえておきたい3つの伝え方

  • 現状:今どのような変化が起きているかを、専門用語だけに頼らず説明する
  • 見通し:今後起こり得る変化を、断定しすぎず医療職と説明内容をそろえる
  • 次の連絡:状態が変わったとき「誰から・どの方法で・どの順番で」連絡するかを決めておく

家族への説明は、介護職一人で背負うものではありません。医療判断が必要な内容は医師・看護師へつなぎ、施設全体で同じ情報を共有することが重要です。

よくある質問

ターミナルケアと看取り介護は同じですか?

重なる部分はありますが、使われる場面や施設の方針によって意味合いが異なります。自施設の方針や医療職の説明を確認し、本人・家族の意思を尊重してチームで支援することが重要です。

介護職だけで終末期の判断をしてよいですか?

いいえ。病状や医療上の判断は医師・看護師などの医療職と連携して行います。介護職は日常生活の中で気づいた変化を記録・報告し、必要な支援につなげる役割を担います。

家族対応で意見が分かれた場合はどうしますか?

介護職個人で結論を出さず、本人の意思、家族の希望、医療・介護チームの方針を確認し、管理者や医療職を交えて整理します。説明内容をスタッフ間でそろえることも重要です。

本人が話せず、ご家族から「私が決めていいのでしょうか」と聞かれたら?

介護職が医療上の結論を示したり、ご家族一人に決定の責任を負わせたりしないことが大切です。例えば、「ご本人が以前、大切にしていたことや、どのように過ごしたいと話していたか、知っている範囲で教えていただけますか。伺ったことは医療・ケアチームに共有します」と伝え、話したくないときは無理に尋ねません。本人の希望が確認できない場合の対応は、担当医師・看護師等と施設の方針に従って検討します。

次の申し送りで確認する一つの行動:ご本人が大切にしていた習慣・呼び名・面会の希望など、確認できた事実と未確認事項を分けて記録し、必要な情報を担当者へ引き継ぎます。家族が話した内容は、同意や施設の情報共有ルールに配慮して扱います。参考:厚生労働省「人生会議」と人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセス。これはコミュニケーション研修の例であり、個別の医療・介護判断を指示するものではありません。

まとめ|ターミナルケア介護にもホスピタリティが重要

ターミナルケアでは、利用者さま本人の意思と尊厳を中心に、身体的・精神的・社会的な苦痛を和らげ、できる限りその人らしく過ごせるよう支えることが重要です。その根幹となるのは利用者さまの希望や意思を最大限に尊重する思いやりの姿勢です。

終末期にある方が不安や孤独感を抱える場合には、本人の希望や状態を確認しながら、傾聴や声掛けなどを通じて安心につながる関わりを考えることが重要です。必要に応じて医療・介護の多職種で情報を共有し、本人が一人で抱え込まないよう支援します。

ホスピタリティの考え方は、相手の立場や状況に配慮した関わり方を考える際の一つの視点です。ターミナルケアに関わる場面では、医療・介護上の判断を優先しつつ、本人の意思や尊厳に配慮したコミュニケーションを検討する際に活用できます。

MCSCでは、医療・介護施設従事者向けに、接遇・コミュニケーション等をテーマとした研修を実施しています。本研修は診断・治療・看護判断を提供するものではなく、現場での関わり方やコミュニケーションを考えるための一般的な学習機会です。

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