「危ないな」と思ったのに、そのままにしてしまった。
職場では、こうした小さな判断の積み重ねが、大きな問題につながることがあります。
私は、人材育成や現場の仕事について話すときに、よく「危ない状態を、危ないままにしない」と伝えます。
大切なのは、問題が起きたあとにうまく処理することだけではありません。気づいた段階で止まり、原因を考え、同じことが繰り返されないところまで進めることです。
「今まで大丈夫だった」は、安全の根拠にはならない
現場では、慣れが力になります。経験を重ねることで、判断が早くなり、仕事の精度も上がります。
一方で、慣れには怖さもあります。
「いつもこのやり方でやっている」「前も問題なかった」「みんなそうしている」。こうした言葉が増えると、目の前の違和感を見落としやすくなります。
たとえば、雨の日だけ床が滑りやすい。ある設備だけ、ときどき変な音がする。忙しい時間帯になると確認が省かれる。引き継ぎのたびに同じ質問が出る。
どれも、その瞬間には事故や大きなトラブルになっていないかもしれません。
しかし、「何も起きていない」と「安全である」は同じではありません。
違和感に気づいたときこそ、一度立ち止まる。それが、現場を守る最初の行動だと私は考えています。
「対処」と「解決」は違う
問題が起きたとき、まず必要なのは目の前の危険を止めることです。
床が濡れていれば拭く。機器に異常があれば使用を止める。お客様や仲間が困っていれば、まずその場を安全な状態にする。
これは大切な「対処」です。
ただし、そこで終わると、同じことがまた起きる可能性があります。
なぜ濡れたのか。なぜ異常が起きたのか。なぜ確認が抜けたのか。誰か一人の注意不足なのか、それとも仕組みそのものに無理があったのか。
原因を確認し、必要な改善を行い、その後に同じ状態が起きていないか確かめる。そこまで進んで、初めて「解決」に近づきます。
対処は今を守る行動。解決は次を守る行動です。
危険を伝えた人が、損をしない職場にする
安全や品質を守るために、私は「声を上げられること」が非常に重要だと思っています。
ところが職場によっては、「そんな細かいことを言うな」「忙しいからあとにして」「前からこうだから」と返されてしまうことがあります。
これが続くと、人はだんだん言わなくなります。
気づいても黙る。見ても通り過ぎる。自分の担当ではないから触れない。
この状態になると、問題そのものよりも、「問題を知らせる力」が組織から失われてしまいます。
リーダーは、報告の内容だけでなく、「教えてくれてありがとう」と受け止める姿勢を持つ必要があります。
すべての指摘が正しいとは限りません。それでも、違和感を共有した行動そのものは大切にする。その積み重ねが、早く気づける組織をつくります。
リーダーが確認したい4つの問い
危険や問題に気づいたとき、私は次の4つを整理するとよいと考えています。
- いま止めるべきことは何か。
- なぜこの状態が起きたのか。
- 誰と共有し、何を変える必要があるのか。
- 改善後、本当に同じ問題が起きていないか確認したか。
特別に難しい仕組みではありません。
しかし、忙しい現場ほど「とりあえず直した」で終わりやすい。だからこそ、この4つを習慣にする意味があります。
安全は、サービスやホスピタリティより前にある
私はホスピタリティやサービスについてお話しする機会が多くあります。
笑顔、言葉遣い、相手を見ること、気づくこと。どれも大切です。
しかし、それ以前に守らなければならないものがあります。
それが、人の安全です。
お客様が安心して過ごせること。働く仲間が無理をせず仕事を続けられること。危険に気づいたときに止められること。
安全が守られていない状態で、どれだけ丁寧な言葉を使っても、本当の意味で相手を大切にしているとは言いにくいでしょう。
だから私は、安全を「担当部署だけの仕事」にしないことが重要だと考えています。
自分の仕事の中で何かに気づいたら、止まる。伝える。考える。そして、次に同じことが起きないようにする。
それは業種や役職に関係なく、仕事をする一人ひとりが持てる姿勢です。
問題を見つける人ではなく、問題を終わらせる組織へ
問題を指摘することだけが目的ではありません。
誰が悪いのかを探すことでもありません。
大切なのは、危ない状態や違和感を放置せず、チームで解決まで持っていくことです。
「あの人が気をつければいい」で終わるのではなく、「どうすれば次は起きにくくなるか」を考える。
私は、こうした職場の方が、人も育ちやすく、仲間同士も助け合いやすいと思っています。
もし今日、職場の中で少しでも「ここは危ないな」「毎回ここで困るな」と思うことがあれば、そのまま通り過ぎないでください。
小さな気づきを、小さな改善につなげる。
その積み重ねが、人を守り、仕事の質を守り、組織を強くしていきます。
研修・講演のご相談
岩城成弘オフィシャル/MCSCの研修・講演については、研修・講演メニューをご覧のうえ、専用窓口からご相談ください。安全意識、人材育成、リーダーシップ、サービス品質など、目的に合わせてご相談いただけます。
部署や現場ごとに内容を組み立てる個別設計型の企業研修については、別法人の株式会社マジカルクリエイトサービス(MCS)へお問い合わせください。岩城成弘オフィシャル/MCSCとMCSは、提供主体・提供内容・条件を分けてご案内しています。
岩城成弘

