監修:岩城成弘
※本記事は職場の情報共有と研修設計に関する一般情報です。医療・介護現場での個別の診断、治療、看護・ケア判断に代わるものではありません。患者・利用者の安全に関する判断は、所属施設の手順と専門職の評価を優先してください。
明日試せる確認:直近の伝達ミスを一つ選び、「誰に・何を・いつまでに・どの方法で伝えるか」「相手が理解したことをどう確かめるか」を5分で確認しましょう。個人を責めるのではなく、情報が欠けた場面を振り返ることが出発点です。

「指示した内容がうまく伝わらない」
「認識違いによるミスが繰り返される」
そんなコミュニケーションの悩みを抱えていませんか?
職場では、ちょっとした伝達ミスが業務の遅れや人間関係の悪化、生産性の低下につながることがあります。
特に管理職やチームリーダーは、「伝えたつもり」と「理解したつもり」のズレに悩まされやすいものです。
この記事では、コミュニケーションミス(ミスコミュニケーションと同義)が起こる原因と、職場で今日から実践できる具体的な防止策を分かりやすく解説します。
以下の記事では、職場のコミュニケーションを活性化させる方法についても解説しています。具体的な方法を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
コミュニケーションミスの正体|ミスコミュニケーションとは

職場で起こるミスコミュニケーションの多くは、単純な伝達不足だけが原因ではありません。
実際には、送り手と受け手の認識のズレや、価値観・経験の違いが大きく関係しています。
また、似た言葉にディスコミュニケーションもありますが、その意味や原因は大きく異なります。
ミスコミュニケーションとは「伝えた内容が誤解されること」を指し、ディスコミュニケーションは「そもそも意思疎通ができていない・断絶している状態」を指す言葉です。
ディスコミュニケーションは、そもそもの関係性から見直す必要がありますが、ミスコミュニケーションは、会話ができているのに些細な行き違いが発生する状態です。そのため、ちょっとした工夫で防ぐことができます。
ミスコミュニケーションを防ぐためには、職場で起こりやすい意思疎通のズレについて整理していきましょう。
以下の記事で、コミュニケーションの意味・重要性や良好な関係を築くスキルについても解説しています。
具体的な方法を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
送り手と受け手の間に生じる認識のズレ
ミスコミュニケーションの本質は、情報を伝える側(送り手)と受け取る側(受け手)の間で、お互いの理解がすれ違っていることです。
最大の問題は、送り手は正しく伝えたつもり、受け手は正しく理解したつもりになっている点にあります。
双方が完璧だと思い込んでいるため、トラブルが起きるまでそのズレに誰も気づけません。
このお互いの「つもり」の重なりこそが、後になって「言った・言わない」のトラブルや、仕事の大失敗を招く本当の原因になります。
不通を意味するディスコミュニケーションとの違い
ディスコミュニケーションとは、会話や連絡がそもそも全く行われていないという不通(シャットアウト)の状態を指します。
ミスコミュニケーションが、伝えたけれど中身がズレてしまった誤解であるのに対し、ディスコミュニケーションは最初から何も伝えていないという点で大きく異なります。
両者は原因も解決策もガラリと変わるため、いま起きている問題がズレ(ミス)なのか不通(ディス)なのかを、正しく見極めることが大切です。
価値観の相違によるコミュニケーションギャップ
コミュニケーションギャップとは、育ってきた環境や世代、立場の違いなどから生まれる、お互いの常識や価値観のズレを指します。
大きな原因は、自分の当たり前は相手にとっても当たり前だと無意識に思い込んでしまい、自分と同じ捉え方を相手に求めてしまうことにあります。
また、お互いの知識の量や理解力に差がある場合にも、このギャップは起こりやすくなります。
この価値観のズレそのものをミスコミュニケーションと呼ぶことも多く、お互いの背景が違うことを前提に、丁寧に言葉を交わすことが大切です。
コミュニケーションでミスが起こる原因

なぜ、気をつけているつもりなのにミスコミュニケーションは繰り返されてしまうのでしょうか。
その理由は、人間の頭の中にある歪曲、省略、一般化という3つのクセにあります。
この3つのクセは誰もが無意識に行っている情報の処理方法ですが、一歩間違えると相手との間に大きな誤解を生む原因になります。
ここからは、ミスを引き起こす3つの正体について、具体例を交えて詳しく解説します。
以下の記事で、コミュニケーションが苦手な人の原因と対策も解説しています。具体的な方法を知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
歪曲|自分の価値観で解釈をねじ曲げる
歪曲(わいきょく)とは、嘘をつくことではなく、受け取った情報に自分の思い込みや過去の経験を付け足して、本来の意味をねじ曲げてしまうことです。
例えば、同僚があなたの話をしていたという事実だけを聞いて、きっと悪口を言われていたんだとネガティブに決めつけてしまうのがこれに当たります。
情報は人から人へ伝わるたびに形が変わりやすいため、会社の連絡網のような伝言ゲームでは、この歪曲が大きなトラブルを引き起こします。
省略|必要な情報を無意識に削る
省略とは、伝える側が大事な詳細を省いてしまい、「あれ」や「例の件」といった曖昧な言葉や、「なるべく早く」などの大雑把な表現で指示を出してしまうことです。
情報が足りないと、受け手は残りの部分を自分の予想や都合のいい解釈で埋めるしかなくなります。
その結果、お互いの認識に大きなズレが生まれ、最終的に、思っていた仕上がりと全然違うという失敗や、仕事の遅れにつながってしまうのです。
一般化|自分の常識を相手の常識と決めつける
一般化とは、自分の経験や考え方だけを基準にして、「普通はこうするよね」、「常識的に考えるとこうだよね」と思い込んでしまうことです。
例えば、今週中という言葉に対して、ある人は金曜日の夕方までと考え、別の人は日曜日の夜中までと考えたりします。
このように人によって言葉のイメージが違うことを考えずに、自分のルールを押し通してしまうと、無意識のうちに相手との間に深い溝を作ることになります。
コミュニケーションでミスを防ぐポイントを解説

コミュニケーションのミスが起こる原因が分かったら、次はそれを防ぐための具体的なアクションを起こしましょう。
意思疎通のズレをなくすためには、ほんの少しの工夫と言葉選びのルールを心がけるだけで、誰でも簡単にトラブルを防げるようになります。
ここでは、今日からすぐに仕事や毎日の会話で使える、ミスコミュニケーションを防ぐための3つの重要なポイントを紹介します。
対策①5W1Hと数値で具体的に伝える
5W1Hと数値を用いた具体的な伝達とは、いつ、どこで、だれが、何を、なぜ、どのように、という要素を意識して、必要な情報を省かずに伝える手法です。
特に、「すぐ」「多めに」といった人の感覚で意味が変わってしまう言葉は避け、「15時までに」「30冊」といった数字を使って誰にでもハッキリわかる表現が有効です。
具体的な数字や期限をきちんと決めておくことで、相手が勘違いするスキをなくし、お互いに同じゴールを目指せるようになります。
対策②復唱(チェックバック)でお互いの理解を確認する
復唱とは、情報を伝えた後に、相手にいまの内容を自分の言葉で言い直してもらうことで、正しく伝わっているかを確認する方法です。
これは医療や飛行機の操縦など、認識のずれが大きな影響につながり得る現場でも用いられているとても信頼できる手法です。
「〇〇という理解で合っていますか」と問いかけて、相手に要点を発言してもらうひと手間を加えるだけで、認識のずれや伝達漏れを減らしやすくなります。医療現場でこの復唱・報告を看護補助者との連携に落とし込む方法は、「看護補助者との連携」も参考にしてください。
対策③記録が残るツールを活用する
口頭だけで話を進めると、後から「言った・言わない」のトラブルに発展しやすいため、メールやチャットなど文字の記録を残すツールがおすすめです。
文字にしておけば、後から読み返して自分の思い違いに気づくことができますし、他の人への共有も簡単になります。
まずは口頭でパッと伝えた用事であっても、後から確認のためにチャットでメモを送っておくことで、双方が内容を確認しやすくなります。
コミュニケーションミス防止チェックリスト
- □ 「すぐ」「適当に」「いつものように」など曖昧な言葉を減らしている
- □ 期限・数量・担当者を具体的に伝えている
- □ 重要な指示は復唱・確認を行っている
- □ 口頭だけで終わらせず、必要な内容は記録に残している
- □ 相手の理解度を確認してから次へ進んでいる
- □ ミスが起きたとき、個人の注意不足だけでなく仕組みも見直している
すべてを一度に変える必要はありません。まずは、同じ種類のミスが繰り返されている場面を1つ選び、伝え方・確認方法・記録方法のどこに原因があるかを見直すことから始めます。
よくある質問
コミュニケーションミスを最も減らしやすい方法は何ですか?
まずは「期限・数量・担当者・確認方法」を具体的にし、受け手に復唱してもらうことです。曖昧な言葉を減らすだけでも、認識のずれは起こりにくくなります。
忙しい職場でも復唱は必要ですか?
すべての会話で長く確認する必要はありません。重要な指示、患者安全に関わる内容、期限や数値がある依頼など、ミスの影響が大きい場面に絞って短く確認すると実践しやすくなります。
同じミスが繰り返される場合はどうすればよいですか?
個人の注意力だけの問題にせず、指示の出し方、記録方法、確認手順、相談先に原因がないかを見直します。同じ場面で繰り返す場合は、仕組みを変えることが再発防止につながります。
まとめ
ミスコミュニケーションは、送り手と受け手の小さな「つもり」という勘違いの積み重ねから発生します。
自分の常識で情報をねじ曲げたり省いたりせず、5W1Hや数字を使って具体的に伝えること、そして復唱やチャットツールで記録を残すことが、認識のずれを減らすうえで重要です。
相手の背景や価値観は自分とは違うということを忘れずに、丁寧なコミュニケーションを心がけて、スムーズな人間関係を作っていきましょう。
医療現場では、患者・家族対応の中でコミュニケーションミスが強い不満やトラブルにつながることもあります。クリニックでの患者対応と職員保護を組織として整える考え方は、「クリニックのカスハラ対策」も参考にしてください。また、コミュニケーションや業務負荷を看護職の定着につなげて考える場合は、「看護師の離職防止」もあわせて確認できます。
コミュニケーションミスを減らす研修・組織改善のご相談
「申し送りで伝達漏れが起こる」「部署ごとに報告ルールが違う」「新人が相談しづらい」など、課題が具体的なときほど、何を改善するかを先に整理することが大切です。岩城成弘オフィシャルでは、看護・介護・医療・クリニック、一般企業の現場課題に応じて、情報共有、傾聴、確認の仕方、チーム内コミュニケーションを考える講演・研修のご相談をお受けしています。
実施時期、参加人数、研修テーマがまだ決まっていない段階でも、現場で起きている具体的な場面からご相談いただけます。お問い合わせは正式なお申し込みを意味しません。

