修学旅行で訪れるテーマパーク。生徒たちが楽しみにしているその一日は、働く人の工夫や、人を思いやる行動に出会う機会にもなります。
事前学習では、まず「誰のために」「どんな安心を」「誰と一緒に支えているのか」という3つの問いを共有してみてはいかがでしょうか。園内で気になった一場面を見つけ、帰ってから自分の言葉で振り返る。そうした小さな取り組みから、仕事や自分の可能性について考えるきっかけをつくれます。
この記事では、修学旅行を担当される先生方に向けて、テーマパーク訪問の前後に使える問いと記録の方法をご提案します。紹介する問いやワークは学習の組み立て例です。学年や学校のねらいに合わせて調整してください。
はじめに、今回の旅で育てたいことを一つ決める
「働くことへの関心を広げたい」「相手の立場を考えてほしい」「自分にもできることに気づいてほしい」。同じテーマパークを訪れる場合でも、学校が大切にしたい学びはさまざまです。
最初に先生方の間で、今回の旅で特に大切にしたいことを一つ言葉にしておくと、生徒への問いかけも整理しやすくなります。
文部科学省は、キャリア教育を、社会的・職業的に自立していくための能力や態度を育み、一人ひとりの成長を支える教育として示しています。将来の職業名を決めることだけに学習を絞らず、人との関わりや自分の行動にも目を向けられます。文部科学省「キャリア教育」
まだ夢や進路が決まっていない生徒も、「この仕事の、こんなところが気になった」と言えれば十分です。その気づきを出発点にしていきましょう。

問い1.その行動は、誰のどんな気持ちを支えている?
最初の問いは、目にした行動の先にいる人についてです。
たとえば、道を案内する人が、相手の反応を確かめながら説明していた場面を見つけたとします。これは学習用の仮の例ですが、生徒には次のように問いかけられます。
- 案内を受ける人は、何に困っていたのだろう
- 説明の仕方に、どんな工夫が見えただろう
- 自分が案内される側だったら、どう感じるだろう
ここで大切なのは、相手の気持ちや働く人の意図を決め付けないことです。「不安だったはず」と断定せず、「初めて来た場所で迷っていたのかもしれない」と考えた理由も添えてみます。
目にしたことと、そこから考えたことを分けると、友達の異なる見方にも耳を傾けやすくなります。同じ場面を見ていても、気づくことは一人ひとり違ってよいのです。
問い2.安心して過ごすために、どんな工夫がある?
次は、安心を支える工夫です。案内表示、順番を待つ場所での声かけ、人が通りやすい空間など、普段は通り過ぎてしまうところにも目を向けてみます。
- 初めて来た人にも、次にどうすればよいか伝わるだろうか
- 急いでいるときや困っているとき、どんな案内があると助かるだろうか
- 自分たちも、周りの人が安心できるように行動できているだろうか
見えた工夫を手がかりに、自分たちの学校にも考えを広げられます。来校した人が教室を探すとき、学校行事で人が集まるとき。誰かが迷う前にできることは、身近な場所にもありそうです。
ただし、観察のために通路をふさいだり、案内や安全確認を妨げたりしないようにします。施設のルールと学校の行動計画を守り、記録は安全な場所で。学ぶ側の思いやりも大切です。
問い3.その仕事は、どんな人とつながっている?
お客様と直接話す仕事のほかにも、場所を整える、物を運ぶ、準備するなど、さまざまな役割があります。見える範囲から、仕事同士のつながりを考えてみましょう。
- いま見ている仕事を、ほかにどんな人が支えていそうだろう
- 次に使う人が困らないよう、何を整えているのだろう
- 自分の学校で、似た役割を担っている人はいるだろうか
見えない仕事については、想像したことを事実として書かないようにします。「もっと知りたいこと」として残し、帰校後に公開情報を調べるテーマにしてもよいでしょう。
華やかな役割に関心を持つ生徒も、準備や支える仕事にひかれる生徒もいます。それぞれの関心を尊重することが、仕事を見る視野を広げる入口になります。
現地では一場面を、4つの欄に残す
たくさんの課題を持たせるより、心に残った一場面を丁寧に振り返る方法をご提案します。ノートや学習シートに、次の4つの欄を用意します。
- 見たこと:いつ、どんな場面で、何があったか
- 考えたこと:誰のための工夫だと感じたか。その理由は何か
- まだわからないこと:確かめたいこと、友達に聞いてみたいこと
- 自分が試すこと:学校生活でできそうな小さな行動
記入例として、「道案内で相手の反応を見ながら話していた」「伝わったか確かめるためかもしれない」「自分も説明した後に、相手が困っていないか聞いてみたい」といった流れが考えられます。
これは架空の学習例です。実際の記録には、その日に自分が見たことを書きます。写真がなくても学習はできます。スタッフや来園者の顔・名前を集めたり、許可のない撮影や聞き取りをしたりする課題にはしません。

帰ってから「自分なら何ができるか」を話してみる
帰校後は、友達と記録を見せ合う時間をつくります。
「私は声のかけ方が気になった」「自分は周りを見て動くところに気づいた」。違う視点に触れることで、一人では気づかなかった仕事の工夫が見えてきます。
最後に、一つだけ学校生活で試す行動を決めてみましょう。
- 説明するときは、相手に伝わったか確かめる
- 次に使う人が困らないよう、共有の物を整える
- 一人で抱えず、必要なときは周りに相談する
数日後に「やってみてどうだった?」と確かめる時間まで用意すると、旅先の気づきを日常へつなげられます。うまくできなかったことも、次にどう工夫するかを考える材料です。

修学旅行の事前学習でよくある質問
将来の夢が決まっていない生徒でも取り組めますか?
職業名を決める課題にする必要はありません。「気になった行動」「自分が助かった工夫」から考え始められます。発表の上手さより、本人が見たことと考えたことを分けて残せる問いを選びましょう。
現地で写真撮影やスタッフへの質問は必要ですか?
必須ではありません。安全な場所で短いメモを残す方法でも振り返りはできます。施設のルールを優先し、働く人や来園者の顔・名前を集めたり、業務を妨げる聞き取りを課題にしたりしないようにします。
人数やテーマが未定でも研修を相談できますか?
未定の点を残したままご相談いただけます。学年、人数の見込み、訪問時期、学校で大切にしたいことを分かる範囲でお知らせください。日程・内容・費用は個別確認となり、問い合わせだけで実施が確定するものではありません。
学校や宿泊先での講話も、目的に合わせて相談できます
岩城成弘オフィシャルサイトでは、学校や修学旅行の宿泊先での講話、テーマパーク訪問前夜・当日の事前研修を案内しています。テーマパークでの働き方やホスピタリティを題材に、子どもたちが将来を考える機会づくりをお手伝いしています。岩城成弘オフィシャルサイト「研修・講演サービス」
「生徒にどんなことを感じてほしいか」「旅行後にどんな学びへつなげたいか」。まずは、その思いをお聞かせください。学年、人数、訪問予定日、実施場所、希望する時間など、わかっている範囲で大丈夫です。実施内容や条件は個別に確認します。
テーマパークでの一日には、楽しさとともに、人のためにできることを見つける機会があります。その気づきを、生徒一人ひとりの次の一歩へつなげていきましょう。

